住友生命が毎月発行している「PHP」という冊子の中に、感動して思わず涙が出た文が掲載されていましたので紹介します。題は「子育てに完璧なんてないよ」という34歳の主婦が書いた作品です。
「私は、6歳の娘と4歳の息子を持つ母親です。ある日、子育ての先輩である私の姉の家に遊びに行ったときのことです。コタツの上に娘の大好きなキャラクターのシールが置いてありました。姉の小学校3年生になる子供のものでした。うちの娘はすかさずシールを手に取ると、しばらく眺めて遊んでいました。私も姉もおしゃべりに夢中で、子供達のことをたいして気にとめていませんでした。
そこに小学校から帰ってきた姉の子供が、大騒ぎを始めたのです。『シールがない。もっとたくさん入っていたのに』。そのとき私はシールに飽きて別のおもちゃで遊んでいた娘を呼びました。『さっきまで遊んでいたシールが少し足りないんだけれども、知らない?』と私が尋ねると、娘は首を横に振って、自らコタツの中や戸棚の上等を探し始めました。姉は、『あんたがだらしがないから、なくしたんじゃないの?、はじめから少ししか入ってなかったのに、人のせいになんかするんじゃないよ。』と自分の子供に言いました。
『人のせい』という言葉で、始めてうちの子供が疑われているのだと気付きました。もし本当にシールを取ってしまっていたらどうしょう。・・・という気持ちと母親の私が信じてあげなくて誰が信じるのか。・・・・という気持ちが頭の中で行ったり来たりしていました。半信半疑のまま、娘の様子を見ていると動きが変です。スカートのポケットを時折押さえたり、私と目があうとニコリと笑いかけてくるのです。娘を6年間育てていて、はじめてみる表情に戸惑いました。娘はウソをついている。半信半疑だったものが一気に確信めいたものに変わりました。そのときでした。コタツに深々と潜り、探していた娘が、シールを手にして『あったよ、ほら。この中にあったんだよ。』と大声を張り上げました。一瞬静まり返った空気の中で姉は、『すごいね。よく見つけたね。』と娘をほめたのです。私はどう言葉にしてよいかわからず、姉に目配せして帰りました。
車の中で、娘は黙ったままです。そんな娘に向かって私が吐き出した言葉は、『ドロボーしたね。』でした。娘は『ウン』と一言だけ言ったきり、家に着くまで下を向いて泣いていました。 家に着いてから姉に電話をかけました。私は後悔で胸が一杯だったのです。娘に投げかけた言葉は、私も娘も一生消えないからです。電話の向こうで、姉は『子育てに完璧なんてないよ。二人きりの時お膝に座らせて、後ろから抱きしめてあげなよ。そして、よく思い切ってポケットの中からシールを出せたねって、ホメてあげなよ。とても勇気がいることをしたねって、手を握ってあげなよ。そうすれば、その手は二度と悪いことをしなくなるから。』と、とても優しい口調で言ってくれたのです。
私は、そのときまで反抗をせずにおとなしい子が、『良い子』だと決め付けていたのです。でも私が完璧な親でないように、子供に完璧を求めるのは間違いだと気付きました。姉からもらったありがたい言葉を、私は一生大切にしていきたいと思います。」






