「相槌を打つ」と言う言葉があります。これは人の話に調子を合わせるという意味ですが、私達の身の回りでも人の話を良く聞き、うまく話をつないでくれる人がいます。いくら話がうまい人でも、話を聞いている相手の人が何の返事もせず、かといって全く気のない返事をしたとしたら、しゃべる人も話す意欲がなくなってくるのではないでしょうか。それだけ話の腰を折らず、相手と会話を続けるためには、適当な「相槌」が必要になってくるわけですが、その「相槌」も打つところを間違えると、お互い気まずくなることがあります。
これは、ゴルフ場内のサウナの中の出来事です。ゴルフが好きな私達20数人の仲間は、毎月1回ゴルフを楽しんでいますが、ある日、プレーした後、いつものようにゴルフ場内の浴室で汗を流すことにしました。その浴室には、サウナ室がありますので、軽く身体を洗ったあと、そのサウナ室に入ったところ、10人位の人達が既に入っていましたが、その人達の全ては私達の仲間でしたから、すぐお互いに話を始め出しました。話の内容は、その日のゴルフのプレーが殆どで、身振り手振りで結構話が弾んでいました。サウナ室の中は、100度位の温度になりますから、1回10分位がせいぜい関の山で、汗が出て身体が熱くなったら、外の冷水風呂で身体を冷やし、またサウナ室に入るということを繰り返すわけです。
私が2回目にサウナ室に入ったところ、座るところが空いていたのは部屋の中央部分で、そこにはたまたま頭の禿げた3人が揃って座っていました。その3人はいずれも50歳代ですが、若い時から頭の毛が薄く、頭のてっぺんがツルツル光り輝いており、最近ではますますその光に磨きがかかっているようです。
私はその3人のすぐ横に座りましたが、3人は笑い転げながら話をしており、面白そうでしたので、聞いてみると、その話の内容はゴルフではなく、どうやら「禿げ」にまつわるものでした。3人のうちの1人が、「さっき、浴室で○○さんが頭を洗っており、手にはシャンプーを一杯つけていたので、『毛が少ないのにそんなにシャンプーをつけるのか。』と言ったら、 ○○さんが『毛が少なくてもシャンプーの量は一緒よ。』と返事をしたが、俺はいつもその半分位しか使っていない。頭の毛が少ないと髪を洗うのが簡単だ。」と笑いながら話をするので、その周りにいた人達も思わず、つられて笑ってしまいました。しかしながら、3人以外は笑いはしましたが、誰も口に出して「相槌」を打とうとはしませんでした。
それは、私にも経験がありますが、「若禿げ」の人達は、自分から「禿げ」にまつわる話を平気でしますが、逆に他人から先に話題にされると、途端に不機嫌になり、そのことをいつまでも根に持つ人がいるからです。従って、「若禿げ」の人達が「禿げ」の話を始めた時は、「相槌」を打たない方が得策なのです。
私達が「相槌」を打たないので、やがて3人とも「禿げ」の話から、もとのゴルフの話題に変わりましたが、それからは、私達も3人の話に積極的に「相槌」を打つようになったのは勿論のことです。






