演歌歌手に山本譲二さんという人がいます。この歌手は、ご存知の通り、演歌界の大御所北島三郎さんのお弟子さんですが、これまで「みちのくひとり旅」等数々のヒット曲があり、今では年末恒例の紅白歌合戦には、常連となって出場している売れっ子の歌い手さんです。
この山本譲二さんが、朝のラジオ番組で「親父を語る」というタイトルで、師匠である北島三郎さんとのやり取りを語っているのを聞く機会がありました。この場合、山本さんにとってタイトルの「親父」とは、もちろん師匠である北島三郎さんのことですが、山本さんが北島さんに弟子入りして、もうかれこれ約30年経っているそうです。
したがって、山本さんが北島さんと話す機会は、仕事以外にも度々ありますが、その際、特に山本さんが気をつけていることが一つあるということでした。
それは、「話のつなぎとなる言葉を大切に」ということでした。北島さんは山本さんに「演歌歌手の心構え」等をくり返しくり返し、自分の体験を交えながら話をするそうですが、それこそ30年も付き合っていると、北島さんが気付かないかもしれませんが、同じ話が何回もあり、中には10回位、同じ話を聞く時もあるということでした。そのとき、山本さんとしては、何回も同じことを聞いており、最初の頃は、「またか」という気持ちがあったそうです。
ところが、「その話は今まで何回も聞きました」と言ってしまうと、永年培われてきた師匠と弟子の関係が崩れ、たちまち話がストップしてしまうのではないかと思うようになったということです。それだけ歌の師匠である北島さんの、山本さん等弟子を思う気持ちが強く、熱弁を振るわせたものと思います。
このように考えると、北島さんとの会話もスムーズにできるようになり、それからは、北島さんが同じ話を始めると、さも始めて聞くような振りをして、「へえ、そうですか。始めて聞きました。」と相槌を打つと、北島さんは得意になって、「演歌歌手の心構え」等を話してくれるそうです。
お陰で、北島さんの弟子の中でも山本さんを特に可愛がり、まるで親父が実の息子に言って聞かせるように、くり返し話をしてくれ、途中で話が途絶えるということは全くないということでした。
この話を聞き、私にもふと思い当たることがありました。私が子供の頃、祖父がよく孫の私達に今でいう「民話」の話をしてくれていました。私は祖父の話を聞いているうち、今まで聞いたような話だったので、「その話は聞いたよ。」と言ってしまったのです。
すると、それまで優しく孫達に話をしていた祖父の顔が急に悲しそうになり、途中で話を打ち切ってしまったのです。私はその瞬間、「出過ぎたことを言ってしまった。」と思いましたが、もう後の祭りでした。子供とはいえ、言ってはいけない言葉により、折角の話の腰を折ってしまったのです。
私の性格でしょうか。このようなことは、60歳を過ぎてしまった今になっても時々あり、いつも反省していますが、今後は山本譲二さんを見習い、少しでも減らしたいものだと考えております。






