悔し涙
私のこれまでの約60年間の人生を振り返って見ますと、試験と名が付くものに数々挑戦してきました。例えば、入学試験、就職試験、昇任試験、運転免許試験、特殊無線技士試験等がありました。
この中では、各種昇任試験には何度か失敗し、悔し涙を流したことがありますが、こと運転免許試験に関しては、幸い、軽自動車、普通自動車、大型自動車、大型二輪車とも全て一回で合格しましたので、まだ、試験に落ちたときの悔しさを味わったことはありません。
都城自動車学校では、修了検定と卒業検定がそれぞれ実施されていますが、全ての受検者が合格というわけにはいかず、中には、あともう少しというところで不合格となる人もいるようです。
修了検定は場内コースで行われますし、また卒業検定も最後の車庫入れの所は、場内コースで行われますので、その様子を見ることがあります。職員室から見ますと、ボンネット上に「検定中」と書かれた教習車を運転している受検者のどの顔も、とても緊張しているようです。
ある修了検定の日、職員室の前のクランクコースを通過する検定車を見ていたところ、若い女性が運転する教習車がやって来ました。コースに入る前には速度を落とし、車の左側の間隔もあり、ハンドルさばきもスムーズにコースに入りましたから、教習が充分行われてきたなと感じたのです。
ところが、ポールの所を左に曲がる時、わずかですがハンドルを切るタイミングが遅れたなと思われる場面がありました。このままでは例えポールに当たらないにしても、左後輪が脱輪するのではないかと思ったのです。
案の定、その検定車は、ポールには接触せずうまく通過しましたが、左後輪は縁石に乗り上げてしまい、たちまち検定中止となったようでした。
その日の修了検定の結果が発表になったあと、職員室からふと窓の外を見ますと、クランクコースの方をジッと見ている若い女性の姿があるのに気付きました。その女性は、横顔からその日の修了検定のクランクコースで失敗した生徒さんだとわかりましたが、ずっとそのままの状態であり、気になりましたから、その生徒さんに「今日の検定は残念だったね。」と声をかけたのです。
するとその生徒さんは、「教習中は一度も失敗しなかったのに・・」と言ったきり、後は言葉にならずに、両目からは見る見るうちに涙が出て来ました。その様子から普段の練習ではうまくいっていたのに、肝心の本番で失敗したとても悔しい気持ちが、ひしひしと私に伝わってきました。
しかし、これは検定ですからいくら悔やんでもしょうがありませんので、「今日のことは忘れ、次の検定を頑張ろうか。」と慰めの言葉をかけますと、涙をぬぐって明るい顔になり、「次は絶対合格します。」と答えてくれましたが、翌々日の検定では、その言葉どおり、見事合格したようでした。
このように検定に失敗し、悔し涙を流す生徒さんを何度か見る機会がありますが、悔し涙を流した生徒さんほど、不思議と次の検定には合格しているようです。ひょっとしたら、「悔し涙」は、頑張る気持ちを生み出しているのかもしれません。






