佐賀県内で農業をしながら作家活動をしている人に「山下惣一さん」という人がいます。山下さんが書いている文章はとてもわかりやすく、しかも題材が私達の身の回りにどこでもある事柄ですので、興味をもって読んでいます。
その山下さんが、毎週1回、朝日新聞に連載しているのが、「惣一っあんの産地着想」という記事です。その記事の中に「順番」というタイトルで書かれたものがありました。その内容は、
「結婚日だというので、女房と近くの寿司屋に出かけた。夫婦だけの会食は、村の中では極めて異例のことだから、店のおばちゃんが驚いて、それこそ棒を飲み込んだような表情で、マジマジと見つめたのはおかしかった。刺し身の盛り合わせでビール1本と、熱燗2合を二人で飲み、ニギリの特上を奮発した。最後に残った寿司を見て大笑いをしてしまった。女房はウニ、私はアワビを残していたからだ。嫌いなのではない。その逆で大好きなのだ。つまり、好きではないネタから食べ始めて、一番好きな物を最後にするという食べ方しか出来ないのである。大好物を残して二人とももう満腹していた。」
というものでしたが、その記事を見て、思わず私は一人でニンマリとしました。
それは、私も山下さんと同年代ですから、子供の頃、嫌いな物と好きな物を一緒に食べる時は、必ず嫌いな物を先に食べ、最後に好きな物を食べていた思い出があり、今でもその癖が直らないからです。
その理由は、好きな物から食べはじめ、次に嫌いな物に移ると、段々食べ物のうまさがまずくなりますし、それよりその逆の方がうれしく、豊かさを感じ、なりよりも食べ終わって「ああ、おいしかった。」と満足感を感じるからです。
このように苦しみ(嫌いな物を食べること)を先にし、楽しみ(好きな物を食べること)を後にする人生を「先憂後楽」型人生というそうですが、私達の年代の者にとっては、このような考え方が、すっかり身に染め付いてしまっているようです。
ところが、最近の若者の中には、好きな物から先に食べ、嫌いな物は残すか、あるいは全く手を付けないという「先楽後憂」型の人間が多くなっているそうです。つまり食べ物一つを取ってみても「価値観」の相違があるということです。
このように「価値観」が逆転したのは昭和40年代以降だそうです。それまでは旅行に行こうと思えば、先ず貯金をし、金が貯まってから旅行していたのが、先ず旅行を楽しんでから、その代金をローンで支払うように変わってきました。旅行だけでなく、車、ファッション等全てがこの方式に変わりました。
このような「価値観」の逆転と関係があるのかもしれませんが、最近の国の経済政策を見ていますと、財源がなくなれば、直ぐ「国債発行」という具合に、万事その場しのぎになっており、今を生きる者の贅沢のために、莫大な借金を子孫に残そうとしている節があります。
ここは一つ、国民全体が考え方を「先楽後憂型」から「先憂後楽型」に変え、ある程度、辛抱する時期に来ているのではないかと考えているところです。






