タクアン
高城町内の無人販売所にタクアンが販売されている所があります。その場所は春日神社前にある無人販売所です。陳列されている野菜は、1年を通していつも新鮮で、タクアンのほか、白菜、大根、ゴボー、ニンジン、里芋等品物も豊富です。
先日の朝、山之口駅から自動車学校に出勤する途中、車窓からその無人販売所を見たところ、陳列台にビニール袋に包まれたタクアンが数本並べてあるのに気付きました。色はスーパー等で販売されているようなどぎつい黄色ではなく、薄い黄色のいかにも農家で作ったおいしそうな感じのするタクアンでした。
さっそく、その日の帰り、その無人販売所に立ち寄り、数本あるタクアンの中から1本を買い求めたわけですが、タクアンは独特の匂いがありますので、念のため匂いを嗅いで見ると、農家で作ったタクアンとはいえ、やはり市販のタクアンと同じ匂いがしたのです。そこで用意してきたビニール袋の中に入れたところ、外には匂いが漏れないようでした。
山之口駅から電車に乗りましたが、乗客は少なく、1車両に5人位でしたので、カバンとタクアンの入ったビニール袋を反対側の席に置き、小説に読みふけっていました。電車がどこかの駅に止まったようでしたので、プラットホームの看板を見たところ、そこは「田野駅」でした。
やがて、私が乗った車両に女子高校生らしき声がして、数人が乗り込んできたようでしたが、いきなり、「臭~い、何~に、この匂い」という大きな声がしたのです。何事かなと思い、読みかけの小説から目を挙げ、声がする車両の入り口付近を見たところ、そこには女子高校生3人が鼻をつまんでいる姿があったのです。
その瞬間、私には匂いの正体は、私が持ち込んだタクアンだということが直ぐわかりました。そこで素早くタクアンの入ったビニール袋をカバンの中に押し込み、隠しましたので、幾分匂いはしなくなりました。それでも、もし女子高校生達に匂いの正体が私が持ち込んだタクアンだとわかったらどうしようか、「タクアンなんか買わなければ良かったのに」と後悔したのです。
しかし、もう遅すぎます。私の席は車両の真ん中付近でしたのが、その席の方に、段々女子高校生達が近づいて来る足音が聞こえて来るのです。私はいかにも小説を読む振りをして下を向き、女子高校生達と目を合わせないようにしていたのです。女子高校生達が私の席の横を通るときは、それこそ息を潜めていましたが、自分ながら恥ずかしさのため、耳たぶが赤くなったような感じで、まさに、「穴があったら入りたい」心境でした。
幸い、女子高校生達には、匂いの正体が私の持っているタクアンだとはわからず、キャー、キャー言いながら私の横を通り過ぎ、後続車両に移ったようでしたので、ほっと胸をなぜ下ろしたというわけです。
こんなに苦労して持ち帰ったタクアンでしたが、市販の物と比べてもおいしく、直ぐ食べ尽くしてしまいました。やはり苦労して買ったかいがあったのです。
その後、無人販売所に陳列されているタクアンを見るたびに、「買って食べたい」という気持ちと、「匂いが漏れたらどうする」という気持ちが交錯し、未だに勇気を出して買えないところです。






