私は、今から約20年前に「交通工学」という分野の勉強をしたことがあります。この学問は、交通事故をなくすためには、3Eの原則、つまり、交通安全教育、交通の取り締まり、そして道路の施設を中心とした各施策が必要といわれていますが、その中の「道路の施設」に関する学問が「交通工学」なのです。
根本的に交通事故をなくすためには、クルマと歩行者等が通行する所を完全に分離する。つまり両者を同じ路上で交差させないということです。この「交通工学」の学問により、我が国においては、道路の施設等が改善されてきました。その一例が横断歩道橋、スクランブル式交差点、バイパス道路の建設等なのです。
この「交通工学」のお陰で、随分交通事故は減ってきましたが、まだまだ抜本的な対策とはいかないようです。それは、国土そのものが狭い我が国においては、クルマと人を完全に分離するということが出来ないからです。
このような交差点における歩行者とクルマの衝突を防ぐために結束し、立ち上がって遂に行政を動かして「歩車分離式信号機」を作らせた住民グループの姿が、NHKテレビの「ご近所の底力」という番組で放映されていました。
このグループは、大阪の豊中市の人達ですが、この地区の小学校近くには信号機が設置してある交差点があるのですが、その交差点では、毎年子供達が右左折するクルマと衝突し、被害者となる交通事故が度々発生していたそうです。
このグループでは、スクランブル式交差点にヒントを得、地元の警察署に対し、「歩行者とクルマを完全に分離した信号機の設置」を要望したそうです。当初、地元の警察署は「交通渋滞が起こる」等と反対していましたが、警察庁等の協力を得て「歩車分離式信号機」が出来上がり、早速その交差点に設置されました。
その結果、平成15年中にはその交差点で15件の歩行者とクルマが接触する交通事故が発生していたのに、設置後は1件の発生もないほか、心配していた交通渋滞もないということです。 子供達からは「安心して通行出来る」という声があるほか、ドライバーも「歩行者に気兼ねせず、安心して右左折出来る」という感想があり、この「歩車分離式信号機」の設置は、まさに一石二鳥の効果があったようです。
「歩車分離式信号機」とは、歩行者とクルマを完全に分離し、横断中の事故を防ごうというものですが、警察庁が考えている「歩車分離式信号機」は、現在のところ、二つあるそうです。
その一つは、全方向の車両の流れを完全に止めて歩行者を横断させる「スクランブル方式」です。そしてもう一つは、歩行者の横断中には右左折者を進行させない「右左折車両分離方式」です。前者はクルマの動きを完全に封じ込めるため、事故をほぼゼロに出来る反面、クルマの流れを止めることによって渋滞の拡大が懸念されており、実際の導入では、後者が中心になるのではないかと言われています。
警察庁では、この新しい信号機の開発が交通事故の減少に役立っていることから、全国で3,000箇所の「歩車分離式信号機」を作る計画です。






