スズムシ
私はJRの電車を利用して通勤していますが、毎年、8月になると楽しみなものがあります。それは、乗車するJR宮崎駅構内に置かれた虫カゴから「リーン、リーン」という、涼し気な「スズムシ」の鳴き声が聞こえてくるからです。
「スズムシ」が入った虫カゴは、毎年、8月始め頃になりますと、駅の1階にある「みどりの窓口」と改札口の直ぐ横のカウンター上の2箇所に置かれます。虫カゴの中の「スズムシ」が盛んにハネを擦り合わせて「リーン、リーン」と鳴く様は、子供の頃聞いた懐かしい虫の声を思い出させてくれますので、毎年のように8月が来るのを楽しみにしながら電車通勤をしているのです。
その「スズムシ」は、駅員の人が毎年、卵を孵化させて育てているのだそうですが、今年も8月の始め頃、いつもの所に「スズムシ」の入ったプラスチック製の虫カゴが置かれました。
そこで、今年はその「スズムシ」がどのようにして素晴らしい音を出すのか、また、「スズムシ」は共食いをする昆虫といわれていますが、本当にそのようなことをするのか興味があり、ジックリその活動の様子を観察することにしたのです。
私が観察することにしたのは、改札口直ぐ横のカウンター上に置かれた虫カゴですが、箱の中の様子を見ると、深さ約5センチメートルの砂場が作られ、その上には古木が置かれています。古木の上では、ハネをひろげて盛んに鳴いている「スズムシ」がいるほか、ナス、カボチャ、キューリ等のエサを一心不乱に食べている「スズムシ」もいます。
その中でよく見ると、「リーン、リーン」と涼し気な音を奏でている「スズムシ」はしょっちゅう鳴いているわけではなく、普段はエサを食べていますが、一匹が鳴き始めると、途端にほかの「スズムシ」もエサを食べるのを止め、一斉に鳴き始めるのです。
このようにハネを擦り合わせて鳴いているのは、「オスのスズムシ」ですが、一方、ハネをひろげず、黙々とエサを食べている「スズムシ」がいます。その「スズムシ」には、身体の長さと同じほどの長い尻尾が付いていますが、その「スズムシ」はメスだったのです。身体はオスの倍近くありますが、それこそ脇目もふらず食べてばかりです。
その「スズムシ」は、観察を始めた8月の始め頃には、約50匹位いましたが、やがて9月の「秋分の日」頃を過ぎますと、段々とその数が減ってきました。しかも鳴く「オスのスズムシ」は少なくなり、「メスのスズムシ」だけが余計目立つようになったのです。
そして台風21号が九州に上陸した9月29日を境に、カゴの中には、ハネをひろげて鳴く、「オスのスズムシ」の姿は全く見られなくなり、エサだけを食べる「メスのスズムシ」ばかりになったのです。そして砂場の上には、メスを求め、短い一生を鳴き続けていた「オスのスズムシ」の亡骸が転がり、それを「メスのスズムシ」が数匹群がって食べている姿がありました。やはり、「スズムシの共食い」はあったのです。
これで今年の「スズムシ」の観察は終わりました。また、来年の8月が来るのを楽しみにすることにしましょう。






